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ゆきくるまえのこうげんのはなし

雪くる前の高原の話

小川 未明

「童話」コドモ社、1926(大正15)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,024 字 · 10 页

青空文庫

「なんというやかましい音だろう。びっくりするじゃないか。」と、はちはいいました。

「安心して止まっていらっしゃい。天気がこう悪くては、どこへもいかれないでありましょう。野原はさびしいにちがいない。遅咲きのりんどうの花も、もう枯れた時分です。そして、あの空の雲ゆきの早いことをごらんなさい。天気のよくなるまでここに止まっていて、太陽が出てあたたかになったら、里の方をさして飛んでいらっしゃい。」と、つたの葉は、しんせつにいってくれました。

若い、一本のすぎが、つたとはちの話をしているのを冷笑しました。

「トロッコの音にたまげたり、これしきの天気におびえているようで、この山の中の生活ができるものか。もっとも、もう一度嵐がきたなら、つたなどは、どこへか吹き飛ばされてしまうであろうし、あんな小ばちなどは、凍え死んでしまうことだろう。この俺は、嵐と吹雪に戦わなければならない。そして、もうおそらく、過ぎ去った夏の日のように、銀色に輝く空の下で、まどろむというようなことは、また来年まではできないであろう……。」と、すぎの木は、いっていました。

赤くなったつたは、勇敢な若いすぎの木のいっていることを聞いて、なんとなく年とってしまった、自分の身の上を恥ずかしく感じたのであります。