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ゆき
雪
楠田 匡介
「探偵新聞」1948(昭和23)年5月5日号、5月15日号、5月25日号、6月5日号、6月15日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,792 字 · 50 页
(四)ランプは誰が消した
「望月はオーバーをどうしたか知りませんか?」と聞いた。
「あ、望月さんのオーバー、あの旦那さんの、なくなられた朝、洗濯屋に出しましたよ」
「洗濯に――ね、あささん、その時、その時望月はオーバーだけだったの?」
「いいえ寝巻も出しました」
「ほう! 寝巻も!」と警部は思わず声を大きくした。
警部はこの真冬の樺太で、一枚しかないオーバーをなぜ望月は、しかも事件のあった朝急いで洗濯に出したか疑問を抱いた。警部は早川の家を出て洗濯屋に廻ってみたが、そのオーバーも寝巻も、もはや洗濯終ってアイロンの仕上にかかっていた。
「何か変った点が、なかったろうか?」と警部は聞いてみたが、洗濯屋は、気の毒そうに頭をふるだけだった。
(四)ランプは誰が消した
「おお、これはこれは」
そういって、山村常顕は自分から玄関に出て警部を招じ入れた。
「さっそくですが、あの早川さんの事件で、あなたに御助言頂こうと思いまして。……あなたの見られた最近の早川さんの事など、お話し頂けないでしょうか?」
一通りの挨拶を交し、樺太の生活から、東京の話などで暫く時を過した後、警部はこういって切り出した。
「早川さんはあの通りの書籍マニヤで……何しろ、樺太もこんな北になりますと、見るもの聴くものとては何もなく、半年以上は雪の中なものですから、まあ船の着く度に注文した本の