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ふうりゅうばけものやしき

風流化物屋敷

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,228 字 · 40 页

青空文庫

庭正面の空いた所は、一面に女竹の筍がにょきにょき伸び、そのまん中に高さ一丈五尺もありそうな柘榴の木があって、季節になると枝という枝に朱色の花をびっしり咲かせるが、荒廃した風景のなかでその毒々しい赤さは一種の妖気を帯びてみえる、誰の眼にもそう映るのだろう、いつからかこの家は「柘榴屋敷」と呼ばれていた。……さて家の裏はくぬぎと杉の林、東は深い藪で、西側に屋根付きの井戸がある。そこから三四間おいて檜葉の生垣を境に、三浦十兵衛という隣り屋敷と続いている。……三浦は馬廻りの二百五十石で五人家族、夫婦と老婆と一男一女である。長男はまだ八歳、娘はとみといって十七になる、この家族はみんな隣りの化物屋敷のことをよく知っているが、なかんずく娘のとみが最も熱心な観察者であって、彼女はそのために浩瀚な備忘録を書いている。ぜんたいとみは幼い頃から「ものに驚く」ことが好きで、この世に不思議や不可解な事が無かったら生きている張合いもないと断言しているくらいだ。したがって化物屋敷についての備忘録は極めて入念詳細にわたり、年月日、天候、時刻、現象、度数など、その記述の科学的なること井上園了氏の「幽霊学」