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ふうりゅうばけものやしき

風流化物屋敷

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,228 字 · 40 页

青空文庫

三 だんだんと日の昏れゆく庭

権八は疑わしげに旦那の顔を見た。皮肉じゃないかと思ったのである、「お庭もまあちっとずつ苅込みますで、へい、なにしろおそっきゅうのことで今日の間に合わなかったものでござりますから」「いや手を付けてはいけない、気に入ったよ」平之助は恍惚と眼を細くした、「これだけ自然の味を出すというのはなみ大抵じゃあない、凡手ではない、よっぽど腕のある庭師でなければこうはいかない、うむ、――気に入った、草一本うごかせやしない、うん」これは皮肉ではない本気だと思ったとたん、権八は感激の余りこの旦那のためには骨身を惜しむまいと誓ったものである。なにしろこの手入れをするということを考えるだけでうんざりしていたんだから。――このとき向うの檜葉の生垣からこっちを見ている娘があった、即ち三浦のとみ嬢である。彼女はそこから、広縁に立っている御座平之助の姿をじっとみつめていた、好奇と憧憬と嫉妬と反感と執着と羨望と憎悪と愛着と、――その他ありとある感情情緒をひっくるめたまなざしで、じっと、じっとみつめていた、それから「まあ、――」と溜息をつくように低く叫んだ、「まあ、――」

三 だんだんと日の昏れゆく庭