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ふうりゅうばけものやしき

風流化物屋敷

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,228 字 · 40 页

青空文庫

こんな会話であるが、これも日の経つに従って少しずつ変化が起った、その一は場所の移動で、立話をする所が井戸端からだんだんと西へ動いてゆく、どうして移動するかというと、これは専らとみ嬢の生垣を毟る趣味に由来するのであって、即ち井戸の附近が毟り尽くされたために、自然と檜葉の秀の茂っている方へ方へと動くわけである。その二はとみ嬢の挙措言動が変ってゆくことで、彼女はいつか薄化粧を始め、白粉や髪油の匂いをさせるようになった。生垣の毟り方なんぞもひと頃よりぐっと上達して技巧が加わり、小指をこう美しくぴんと反らせて、ごく上品に優雅に、ちょいちょいとやるといった具合である。その三は会話の内容で、化物の事などはもう拝啓前略と片付け、人事百般あらゆる問題が話にのぼる、就中すこぶる家庭的傾向を帯びてきた。例えば、「化物といえば、お食事はどうなすっておいでですの」こんな風である。こっちものんびりしたもので、「食事って、化物のですか、私のですか」「もちろん御座さまのお食事ですわ」「私なら古梅亭から運ばせています、飯炊きも料理人も来手がないもんですからね」「それはお気の毒ですこと、料理屋の食事なんて儲けるために作るので心が籠っておりませんもの、お食事だけは愛情だと申しますのにね、――お世話をする者がいなくてはいけませんわ」