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めしまつま
飯待つ間
正岡 子規
正岡子規『飯待つ間』。同一底本的分册已合并为一书。收入:飯待つ間、犬、画、句合の月、九月十四日の朝、くだもの、ランプの影、熊手と提灯、徒歩旅行を読む、病牀苦語、車上の春光、煩悶、初夢、夢、病、墓、酒、権助の恋、恋。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,525 字 · 126 页
もっとも着物は洋服一枚着たきりで日本服などはない、外套も引っかけたままで寝て居るのである。航海中の無聊は誰も知って居るが、自分のは無聊に心配が加わって居るので、ただ早く日本へ着けば善いと思うばかりで、永き夜の暮し方に困った。時々上の桟敷で茶をこぼす、それが板の隙間から漏りて下に寝て居る人の頭の辺へポチポチと落ちて来る、下の人が大きな声で、何かこぼれますよ、と怒ったようにいう、上の人が、アアそうですか失敬失敬、などという。こんな問答でもあるとその間だけ気が紛れて居るが、そんな事も度々はない。退屈の余り凱旋の七絶が出来たので、上の桟敷の板裏へ書きつけて見たが、手はだるし、胸は苦しし遂に結句だけ書かずにしまった。その内にも船はとまって居るのでもないからその次の日であったかまた次の日であったのか午前に日本の見えるという処まで来た。日本が見える、青い山が見える。という喜ばしげな声は処々で人々の口より聞えた。寝て居る自分もこの声を聞いて思わずほほ笑んだ。午後には馬関にはいった。この時室内を見まわして見ると、五、六十人も居る広い室内に残って居る者は自分一人であった。