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めしまつま
飯待つ間
正岡 子規
正岡子規『飯待つ間』。同一底本的分册已合并为一书。收入:飯待つ間、犬、画、句合の月、九月十四日の朝、くだもの、ランプの影、熊手と提灯、徒歩旅行を読む、病牀苦語、車上の春光、煩悶、初夢、夢、病、墓、酒、権助の恋、恋。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,525 字 · 126 页
病
○明治廿八年五月大連湾より帰りの船の中で、何だか労れたようであったから下等室で寝て居たらば、鱶が居る、早く来いと我名を呼ぶ者があるので、はね起きて急ぎ甲板へ上った。甲板に上り著くと同時に痰が出たから船端の水の流れて居る処へ何心なく吐くと痰ではなかった、血であった。それに驚いて、鱶を一目見るや否や梯子を下りて来て、自分の行李から用意の薬を取り出し、それを袋のままで着て居る外套のカクシへ押し込んで、そうして自分の座に帰って静かに寝て居た。自分の座というのは自分が足を伸ばして寝るだけの広さで、同業の新聞記者が十一人頭を並べて居る。自分らの頭の上は仮の桟敷で、そこには大尉以下の人が二、三十人、いつも大声で戦の話か何かして居る。その桟敷というのは固より低いもので、下に居る自分らがようよう坐れる位のものだから、呼吸器の病に罹って居る自分は非常に陰気に窮屈に感ぜられる。血を咯く事よりもこの天井の低い事が一番いやであった。この船には医者は一人居たがコレラの薬の外に薬はないそうだ。固より病人の手あてなどしてくれる船ではないから、時々カクシの薬を引き出しては独り呑んで見るけれど、血はやはりとまらぬ。