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めしまつま

飯待つ間

正岡 子規

正岡子規『飯待つ間』。同一底本的分册已合并为一书。收入:飯待つ間、犬、画、句合の月、九月十四日の朝、くだもの、ランプの影、熊手と提灯、徒歩旅行を読む、病牀苦語、車上の春光、煩悶、初夢、夢、病、墓、酒、権助の恋、恋。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,525 字 · 126 页

青空文庫

こんな奴にはきっと福は来ないよ。身分不相応な大熊手を買うて見た処で、いざ鎌倉という時に宝船の中から鼠の糞は落ちようと金が湧いて出る気遣はなしさ、まさか大仏の簪にもならぬものを屑屋だって心よくは買うまい。…………やがて次の熊手が来た。今度は二人乗のよぼよぼ車に窮屈そうに二人の婆さんが乗って居る。勿論田舎の婆さんでその中の一人が誠に小い一尺ばかりの熊手を持って居る。もし前の熊手が一号という大きさならこの熊手は廿九号位であるであろう。その小さな奴を膝の上にも置かないでやはり上向けて大熊手持ったようにさしあげて居たのもおかしい。その無邪気な間の抜けた顔は慥かに無慾という事を現して居るので、こいつには大に福を与えてやりたかった。自分が福の神であったら今宵この婆さんの内に往て、そっとその枕もとへ小判の山を積んで置いてやるよ、あしたの朝起きて婆さんがどんなに驚くであろう。しかし善く考えると福相という相ではない。むしろ貧相の方であって、六十年来持ち来ったつぎまぜの財布を孫娘の嫁入に譲ってやる方だ。して見ると福の神はこんな皺くちゃ婆さんを嫌うのであろうか。あるいは福の神はこの婆さんの内の門口まで行くのであるけれど、婆さんの方で、福なんかいらないというて追い返すような人相とも見える。