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めしまつま

飯待つ間

正岡 子規

正岡子規『飯待つ間』。同一底本的分册已合并为一书。收入:飯待つ間、犬、画、句合の月、九月十四日の朝、くだもの、ランプの影、熊手と提灯、徒歩旅行を読む、病牀苦語、車上の春光、煩悶、初夢、夢、病、墓、酒、権助の恋、恋。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,525 字 · 126 页

青空文庫

その最も端に便器が落ちそうに立てかけてあるのが気になる。

厩橋まで来た。橋の袂に水菓子屋があって林檎を横に長く並べてあった。

橋の上に来て左右を見わたすと、幅の広い水がだぶりだぶりと風にゆさぶられて居るのが、大きな壮快な感じがする。年が年中六畳の間に立て籠って居る病人にはこれ位の広さでも実際壮大な感じがする。舟はいくつも上下して居るが、帆を張って遡って行く舟が殊に多い。その帆は木綿帆でも筵帆でも皆丈が非常に低い。海の舟の帆にくらべると丈が三分の一ばかりしかない。これは今まででもこうであったのであろうが今日始めて見たような心持がしてこの短い帆が甚だおかしくてたまらぬ。けれどもこれが橋の下を通る舟の特色であると思うとそのおかしい処に感じの善い処がある。

橋を渡った。もうくたびれてしもうて観察するのがいやになった。この後は何処を通って往たか知らぬ。

ついでにことわって置くが、体を車の右へ片寄せて乗って居るから観察は町の左側の方が多い。

本所停車場を過ぎてようよう左千夫の家に著いた。格堂は出て来たが主人は出て来ない。主人は留守であるのだ。どうしようか、と暫く躊躇した。