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こつぼとけ

骨仏

久生 十蘭

「小説と読物」1948(昭和23)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,105 字 · 5 页

青空文庫

ファイアンスの白を追いこすことが出来れば、黒いチューリップや青いダリヤを完成したくらいのえらい騒ぎがおきるんです」

「すると君がやっているのは、中世の錬金道士の仕事のようなものなんだね」

と皮肉ってやったが、まるで通じないで、

「錬金道士か。なるほどうまいこという。そうです。そうです。そうなんですよ。ひとつお目にかけますかな」

ひょろひょろしながら出て行ったが、すぐ白い瀬戸物のかけらを持って戻ってきた。

「どうです。この白のねうちがあなたにわかりますか。これでたいしたものなんですよ。いったい磁器の白さをだすには、人骨の粉末を微量にまぜるというマニエールがあって、それは誰でも知っているんですが、セエブルでもリンブルゴでも、混合の比率は秘密にして絶対に知られないようにしているんです」

「そういうものかね。はじめてきいた。でもそれは人間の骨でなくてはいけないのか」

「そうです」

というと、膝杖をついてうつらうつらとなにか思案しはじめた。

この白さをだすのに誰の骨を使ったかなどとかんがえるまでもない。伊良の細君は肌の白い美しいひとで、その肌なら、ある意味で伊良よりもよく知っているわけだが、そのひとの骨がこの磁器のかけらにまじりこんでいると思うと、その白さがそのまま伊良の細君の肌の色に見え、いい知れぬ愛憐の情を感じた。