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くろてぐみ
黒手組
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,978 字 · 36 页
(下)隠れたる事実
日蓮宗に凝り固まっている伯父は一寸いやな顔をしましたが、
「よろしい。わしは一体耶蘇教は大嫌いですが、外ならんあんたのお頼みとあれば、一つ考えて見ましょう」
「いや有難う。きっといつかお願いに上りますよ。どうか今のお言葉をお忘れない様に願います」
この一くさりの会話は、一寸妙な感じのものでした。座興と見ればそうとも考えられますが、真剣な話と思えば、又そうらしくもあるのです。ふと私は、バリモアの芝居では、あのシャーロック・ホームズが、事件で知合いになった娘と恋に陥り、遂に結婚する筋になっているのを思い出して、密かにほほ笑みました。
伯父はいつまでも引止めようとしましたが、余り長くなりますので、やがて私達は暇を告げることにしました。伯父は明智を玄関まで送り出して、お礼の寸志だといいながら、彼が辞退するのも聞かないで、無理に二千円の金包を明智の懐へ押し込みました。
(下)隠れたる事実
「君、いくら『黒手組』との約束だって、僕に丈けは様子を話して呉れたっていいだろう」
私は伯父の家の門を出るのを待ち兼ねて、こう明智に問いかけたものです。
「ああ、いいとも」彼は案外た易く承知しました。