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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页

青空文庫

ヴィクトリア朝末期に栄えたキューダビイの家も、ちょうど降矢木の三事件と同じ形で絶滅されてしまったのだ。その最初のものは、宮廷詩文正朗読師の主キューダビイが、出仕しようとした朝だった。当時不貞の噂が高かった妻のアンが、送り出しの接吻をしようとして腕を相手の肩に繞らすと、やにわに主は短剣を引き抜いて、背後の帷幕に突き立てたのだ。ところが、紅に染んで斃れたのは、長子のウォルターだったので、驚駭した主は、返す一撃で自分の心臓を貫いてしまった。次はそれから七年後で、次男ケントの自殺だった。友人から右頬に盃を投げられて決闘を挑まれたにもかかわらず、不関気な顔をしたと云うので、それが嘲笑の的となり、世評を恥じた結果だと云われている。しかし、同じ運命はその二年後にも、一人取り残された娘のジョージアにも廻ってきた。許娘者との初夜にどうしたことか、相手を罵ったので、逆上されて新床の上で絞殺されてしまったのだ。それが、キューダビイの最期だったのだよ。ところが小城魚太郎は、とうてい運命説しか通用されまいと思われるその三事件に、科学的な系統を発見した。そして、こういう断定を下している。