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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页

青空文庫

二、光と色と音――それが闇に没し去ったとき

ところが、あの夜九時になって、シャビエル上人の右手が振り下されると、同時にこの鉄扉が、人手もないのに開かれたのでしたね」

二、光と色と音――それが闇に没し去ったとき

ああ、シャビエル上人の手! それがこの、二重の鍵に鎖された扉を開いたとは……。事実、法水の透視神経が微妙な放出を続けて、築き上げた高塔がこれだったのか。しかし、検事も熊城も、痺れたような顔になって容易に言葉も出なかった。と云うのは、これがはたして法水の神技であるにしても、とうていそのままを鵜呑みに出来なかったほど――むしろ狂気に近い仮説だったからである。津多子はそれを聴くと、眩暈を感じたように倒れかかって、辛くも鉄柵扉で支えられた。が、その顔は死人のように蒼白く、彼女は、絶え入らんばかりに呼吸せきつつ、眼を伏せてしまった。法水もさもしてやったりという風に、会心の笑を泛べて、

「ですから夫人、あの夜の貴女は、妙に糸とか線とか云うものに運命づけられていたのですよ。しかし、その方法となると、相変らず一年一日のごとくで……。いやとにかく、僕の考えていることを実験してみますかな」

それから、符表と文字盤を覆うている、鉄製の函を開く鍵を、真斎から借りて、まず鉄函を開き、それから文字盤を、右に左にまた右に合わせると、扉が開かれた。