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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
結論は、閃光的に顔面右半側に起る、グプラー痲痺の遺伝にすぎないという。すなわち主の長子刺殺は、妻の手が右頬に触れても感覚がないので、その手が背後の帷幕の蔭にいる密夫に伸べられたのでないかと誤信した結果であって、そうなると、次男の自殺は論ずるまでもなく、娘もやはりグプラー痲痺のために、愛撫の不満を訴えたためではないかと推断しているのだ。勿論探偵作家にありがちな、得手勝手きわまる空想には違いない。けれども降矢木の三事件には、少なくとも聯鎖を暗示している。それに、小さな窓を切り拓いてくれたことだけは確かなんだよ。しかし遺伝学というのみの狭い領域だけじゃない。あの磅としたものの中には、必ず想像もつかぬ怖ろしいものがあるに違いないのだ」
「フム、相続者が殺されたというのなら、話になるがね。しかし、ダンネベルグじゃ……」といったん検事は小首を傾げたけれども、「ところで、今の調書にある人形と云うのは」と問い返した。
「それが、テレーズ夫人の記憶像さ。博士がコペツキイ一家(ボヘミアの名操人形工)に作らせたとかいう等身の自働人形だそうだ。しかし、何より不可解なのは、四重奏団の四人なんだよ。