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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
そして、昂奮を投げ交すような声でしばらく騒然となっていたが、やがて熊城が、蹴散らすようにして記者達を追い出してしまうと、再びいつものような三人だけの世界に戻った。法水はしばらく凝然と考えていたが、稀らしく紅潮を泛べた顔を上げて云った。
「ねえ支倉君、とうとう僕は、ある一つの結論に到達したのだ。勿論外包的だよ。全部の公式はとうてい判っちゃいないがね。しかし、個々の出来事からでも、共通した因数を知ることが出来たとしたら、どうだろう」と二人の顔をサッと掠めた、驚愕の色に流眄をくれて、「ところで君は、この事件の疑問一覧表を作ってくれたはずだったね。では、その一箇条一箇条の上に、僕の説を敷衍させてゆくことにしようじゃないか」
検事が固唾を嚥みながら、懐中の覚書を取り出した時だった。扉が開いて、召使が一通の速達を法水に手渡しした。法水は、その角封を開いて内容を一瞥したが、格別の表情も泛べずに、すぐ無言のまま卓上の前方に投げ出した。ところが、それに眼を触れた検事と熊城はたちまちどうにもならない戦慄に捉えられてしまった。見よ、ファウスト博士から送られた三回目の矢文ではないか! それには、いつものゴソニック文字で、次の文章が認められてあった。