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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
とにかく、支倉君の書いた疑問一覧表を基礎にして、あの薄気味悪い赤い眼の視差を計算してゆくことにしよう」と法水の眼の光が消えて、卓上のノートを開きそれを読みはじめた。
一、四人の異国楽人について
被害者ダンネベルグ夫人以下四人が、いかなる理由の下に幼少の折渡来したか、また、その不可解きわまる帰化入籍については、いささかの窺視も許されない。依然鉄扉のごとくに鎖されている。
二、黒死館既往の三事件
同じ室において三度にわたり、いずれも動機不明の自殺事件に対して、法水はまったく観察を放棄しているようである。ことに、昨年の算哲事件については、真斎を恫する具には供しているけれども、はたして彼の見解のごとく、本事件とは全然別個のものであろうか。法水が黒死館の図書目録の中から、ウッズの「王家の遺伝」を抽き出したのは、その古譚めいた連続を、彼は遺伝学的に考察しようとするのではないか。
三、算哲と黒死館の建設技師クロード・ディグスビイの関係
算哲は薬物室の中に、ディグスビイより与えらるべくして果されなかった、ある薬物らしいものを待ち設けていた。その意志を、一本の小瓶に残している。