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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页

青空文庫

そして、現場の敷物の下には、人形の足型が、扉を開いた水を踏んでまざまざと印されている。しかし、その人形には特種の鳴音装置があって、附添いの一人久我鎮子は、その鈴のような音を耳にしなかったと陳述しているのだ。勿論法水は、人形の置かれてあった室の状況に一抹の疑念を残しているけれども、それは彼自身においても確実のものではなく、すなわち、否定と肯定との境は、その美しい顫音一筋に置かれてあると云っても過言ではない。

八、黙示図の考察

法水がそれを特異体質図と推定しているのは、明察である。何故なら、自体の上下両端を挾まれている易介の図が、彼の死体現象にも現われているではないか。しかし、伸子の卒倒している形が、セレナ夫人のそれを髣髴とさせるのは、何故であろうか。また法水が、象形文字から推定して、黙示図に知られない半葉があるとするのは、仮令論理的であるにしても、すこぶる実在性に乏しく、結局彼の狂気的産物と考えるほかにない。

九、ファウストの五芒星呪文(略)

十、川那部易介事件

法水の死因闡明は、同時に甲冑を着せしめたところに、犯人の所在を指摘している。それを時間的に追及すると、伸子にのみ不在証明がない。