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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
勿論その蝋燭が、火災の原因だったことは云うまでもないであろう。
ボヘミア周辺地図の図
ああ開幕当初の場面に、法水はなんと生彩に乏しい例証を持ち出したことであろうか。けれども、続いて彼が、それに私見を加えて解答を整えると、偶然その独創の中から、さしも循環論の一隅に破られんばかりの光が差しはじめた。
「ところで、あの一文だけでは、憲兵デーニッケの推理経路がいっこうに不明だけれども、僕はそれに解析を試みたのだ。死体を囲んだと云われる蝋燭の数は、その実五本だったのだよ。しかも、死体に十字を切らせるためには、それで死体を囲まずに、削ぎ竹のように片側の蝋を削いだ丈の短い四本を周囲に並べて、その中央に、全長の半ばほどの蝋を取り除いて長い芯だけにした一本を置き、それを囲ませなければならなかった。何故なら、風鶏計の四本の手の向きを互い違いにした場合に、どういう現象が起るか。つまりこの場合は、斜めに削いだ分の側を、互い違いの向きにして列べたので、火が点ぜられると、熱せられた蝋の蒸気が傾斜を伝わって斜めに吹き上げる。したがって、それぞれに削いだ向きが異なっているので、その上方に形の気流を起させるのだ。