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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
それが、中央の長い芯を廻転させて、その光の描く影で、死体の手に十字を切るような錯覚を現わしたのだよ。そうなって、屍光と創紋の生因を追求してゆくと、是が非にも、僕等は神意審問会まで遡って行かねばならぬような気がしてくる。ボヘミアのケーニヒグレーツで点された蝋燭の中に、あるいは、ダンネベルグ夫人のみに現われた、算哲の幻影が秘められているのじゃあるまいかね。ねえ支倉君、偶然の中からは、往々に数学的なものが飛び出してくるものだよ。何故なら、元来恒数と云うものは、常に最初の出発点形式は仮定であり、しかる後に、常住不変の因数を決定するのだからね」と法水の顔に、いったんは混乱したような暗影が現われたけれども、彼はさらに語を次いで、屍光に関して、地理的にも奇妙な暗合のあるのを明らかにした。しかし、そういう隔絶した対照は、結果において紛乱を助長するものにすぎなかったのである。
「次に僕は、カトリック聖僧に関する屍光現象に注目したのだ。ところが、アヴリノの『聖僧奇蹟集』を読むと、新旧両教徒の葛藤が最もはなはだしかった一六二五年から三〇年までの五年ほどの間に、シェーンベルグ(モラヴィア領)のドイヴァテル、ツイタウ(プロシア)のグロゴウ、フライシュタット(高部アウストリア)のアルノルディン、プラウエン(サキソニー領)のムスコヴィテス