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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页

青空文庫

「それでは、シュルツ(フリッツ・シュルツ――。前世紀独逸(ドイツ)の心理学者)の精神萌芽説(この説は、狂信的な精神科学者特有のもので、一種の輪廻説である。すなわち、死後肉体から離れた精神は、無意識の状態となって永存する。それは非常に低いもので意識を現わすことは不可能だが、一種の衝動作用を生む力はあると云う。そして、生死の境を流転して、時折潜在意識の中にも出現すると称えるけれども、この種の学説中での最も合理的な一つである。)を御存じでいらっしゃいましょうか。私だっても、確実な論拠なしには主張しはいたしません」とはたして大風な微笑を泛べて、鎮子は再び、この事件に凄風を招き寄せた。

「な、なに、精神萌芽説を※(感嘆符疑問符、1-8-78)」と法水は、突然凄じい形相になり、吃りながら叫んだ。「では、その論拠はどこにあるのです……。貴女は何故、この事件に生命不滅論を主張されるのですか。すると、算哲博士が未だに不可解な生存を続けているとでも。それとも、クロード・ディグスビイが……」

精神萌芽――その薄気味悪い一語は、最初鎮子の口から述べられ、続いて法水によって、それに不死説という註釈が与えられた。