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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
二、大階段の裏に……
ある。こうして、いったん絶望視された事件は、短時間の訊問中に再び新たな起伏を繰り返していったが、続いて、現象的に希望の全部がかけられている、大階段の裏――を調査することになった――それが五時三十分。
二、大階段の裏に……
法水が十二宮から引き出した解答――大階段の裏には、その場所と符合するものに、二つの小室があった。一つは、テレーズ人形の置いてある室で、もう一つは、それに隣り合っていて、内部は調度一つない空部屋になっていた。法水はまず後者を択んで把手に手を掛けたが、それには鍵も下りていず、スウッと音もなく開かれた。構造上窓が一つもないので、内部は漆黒の闇である。そして、煤けた冷やかな空気が触れてくる。ところが、先に立った熊城が、懐中電燈をかざしながら壁際を歩いているうちに、ふと何を聴いたものか、背後の検事が突然立ち止った。彼は、なにかしら慄然としたように息を詰め、聴耳を立てはじめたのであるが、やがて法水に、幽かな顫えを帯びた声で囁いた。
「法水君、君はあれが聴えないかね。隣りの室から、鈴を振るような音が聴えてくるんだ。凝然と耳をすましてい給え。そら、どうだ。