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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
何故なら支倉君、犯人はダンネベルグ夫人と同じに、自分もサントニンを嚥まなければならなかったのだから、当然そう判ると、あの枯芝を何故跨がねばならなかったか――という意味が、判然とするだろう。つまり、それは一種脳髄上の盲点で、自分にはさほどの黄視症状も起っていないにかかわらず、当然黄視症が発していると信じてしまったのだ。そして、あの――夜目に黄色く光って見える枯芝を、水溜りが、黄視症のために黄色く見えた――と錯誤を起したからなんだよ。しかし、サントニンが腎臓に及ぼした影響が、一方あの屍光の生因を、体内から皮膚の表面へ担ぎ上げてしまったのだ」
それから、法水は帷幕の中に入って、寝台の塗料の下にグイと洋刀の刃を入れた。すると、下にはまた瀝青様の層があって、それに鉛筆の尻環を近づけると、微かながらさだかに見える螢光が発せられた。
「今までは、寝台の附近に、屍体のような精密な注視を要求するものがなかったので、それで、自然気がつかれなかったに違いないがね。勿論この瀝青様のものが、ウラニウムを含むピッチブレンドであることは云うまでもあるまい。そして、僕がいつぞや指摘した四つの聖僧屍光、それがことごとくボヘミア領を取り囲んでいるのだ。