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くろネクタイぐみのましゅ

黒襟飾組の魔手

山本 周五郎

「少年少女譚海」1930(昭和5)年8月別冊読本

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,299 字 · 27 页

青空文庫

黒い封筒の挑戦状

黒い封筒の挑戦状

八月の午後の陽は府立第X×中学の野球グラウンドの上に照りつけていた。

グラウンドでは三年級のティームが猛練習の最中だった。こっちのスタンドには三年級受持の倉持教諭が、同僚の化学の教師と共に話していた。

「あの捕手は肩も良いし、とても綺麗なプレイをするが、何という生徒だね」

「あれか、あれはそら、先月だったかC・C・D潜水艦事件で手柄をあげた、あの春田龍介だよ」

「ああ、あの少年探偵か、ふーむ」

「二年級のキャプテンをやっているんだ。とても確りしている。秋には全国中等学校野球大会へ出るんで、この暑いのに毎日猛練習さ。あれで家へ帰ると、父さんの化学実験の手伝をするんだそうだからね……」

話しあっていた時――詰衿服に鳥打帽をかぶった混血児の少年が、スタンドに上ってきた。

「春田龍介君にお眼に掛りたいのですが」

「何の用だね」倉持教師が振返って訊いた。

「手紙を頼まれて来たんです」混血児の少年はそういって、黒い封筒にはいった書面を見せた。

「じゃ待っていたまえ、いま練習中だからね。もうすぐ休憩になる」

「では、先生からおわたし下さい。僕ちょっと急ぎますから」