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くろネクタイぐみのましゅ
黒襟飾組の魔手
山本 周五郎
「少年少女譚海」1930(昭和5)年8月別冊読本
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,299 字 · 27 页
それは今きたばかりの桂河探偵の名刺だった。龍介はそれを見ると、
「おやおや、こんな物を持ってきちゃった」
そういって苦笑しながら玄関へ急いだ。
明る日の朝、食事の後で龍介は自動車で子爵を訪ねた。子爵もちょうど食事を終ったところだったが、龍介を迎えると、急いで書斎へ導いて、卓子の上を指示した。
「御覧、龍介この通りだ※」
見ると卓子の上には、朱色のチョークで大きく、
「黒襟飾組来る――十四日深夜二時」と、書きつけてあった。
「探偵はどうしました?」龍介が訊ねた。
「まあ、お聴き――俺と探偵は昨夜十二時にこの書斎へ入って坐った。そして窓の扉にも出入口の扉にも厳重に鍵をかって見張をしていた。一時になって、二人は紅茶を飲んだ。それから三十分も経ったろうか、二人はいつしかとろとろと居睡りをしていたらしい。二時を打つ時計の音でハッと気がついて見ると、探偵が眠っている、ゆり起したが、よく眠っていてなかなか起きなかった。それでもやっと呼起して、行って見ると卓子の上に、朱色のチョークで書いてある。――すぐ調べたが、窓の扉も出入口の扉もちゃんと閉まって鍵がかかっているのだ。桂河探偵は、こんな眼に会ったのは初めてだと大変怒っていたがね」