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あるおんせんのゆらい

ある温泉の由来

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,655 字 · 30 页

青空文庫

早川君は銀行に勤めるようになってからも、日曜毎に遊びに来た。その一年間雨の降らない限り殆んど欠かさなかった。友達もこれぐらいになると貴い。

「君は実に精勤だね」

と僕は褒めてやった。

「お蔭でもうソロ/\一人前の銀行員になれそうだ」

「銀行の方は無論そうだろうが、此方さ、友情の精勤だ。面白い話もないのに、よくやって来る。君の方からばかり来て貰っちゃ済まない。此方からも些っと行くことにしよう」

「いや/\/\」

「構わないのかい?」

「うむ。一向苦労にもならないんだから」

「今度の日曜は僕の方から行く」

「いや/\/\」

「何故?」

「思い切って、言ってしまおうかな?」

「次第があるのかい?」

「うむ。複雑な心理が働いている」

同じ荒神風呂に中島屋という家がある。以前は僕のところの小作で荒物屋をしていたが、長男と次男がアメリカへ稼ぎに行って金を送るから、近頃は裕福に暮している。家も新築した。一番末の娘が僕達に一年後れて女学校を卒業した。ナカ/\綺麗な子で、成績が素晴らしく好いという評判だった。早川君は通学の当時この娘さんの姿を見かけると、澄し返るのが常だった。或時、冗談のように、