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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页

青空文庫

一

一

国許の人間は頑固でねじけている。

――女たちがわるくのさばる。

――江戸からゆく者は三年と続かない。

江戸邸ではもうずっと以前からそういう定評があった。また事実がいつもそれを証明してきた。特に若くて重い役に赴任したような者は、例外なしに辛きめにあうということだ。

――理由はいろいろあるだろうが、どこの藩でも、藩主は江戸うまれの江戸そだちであるから、自分が家督して政治を執るばあいには、しぜん身近で育って気心の知れた者を、重要な役につかいたくなる。これはどうしてもそうなりがちである。

国許そだちの人間は性格がとかく固定的で、融通性に欠けている例が多い。環境が根づよい伝習でかたまっているためもあろう。暢気な者はばかばかしく暢気だし、偏屈な人間はしまつに困るほど偏屈である。

――この藩ではその点がことに際立っていた。おそらく気候風土の関係もあるのだろうが、一般に傲岸粗暴であり、きわめて排他的な気分が強かった。

――江戸の人間はふぬけで軽薄だ。

――人にとりいるのが上手だ。

――口さきがうまくて小細工を弄する。

かれらはかれらでこう信じていた。そしてその信念を決して譲ろうとはしなかった。