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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页

青空文庫

と思うのですが」

「悪くはないですね」津田は頷いたが、同時に危ぶむような微笑をみせた。

「――寧ろよい御思案でしょうが、ここの女たちはちょっと気風がべつですからな、全部が全部というわけでもないが、古くからの気風ですからなかなかそこが」

「たいてい想像はしていますし、その点は無理をしなければいいと思います」

津田は静かに頷いたまま、もうなにも云わなかった。独りになってから、玄一郎はちょっと自分がにがにがしく思われた。この土地の者と結婚しようということは、江戸を立つまえに心できめていた。これまで江戸から来た者が結局ここの人たちと融合することができず、大多数が任期の終るまえに辞して帰った。それはつまるところ「江戸から来た」人間であり、「また江戸へ帰る」人間だということが、ここの人たちとのあいだに一種の隔てをつくっていたのではないか。

根本的には気質や風習の違いもあるだろうが、この土地で結婚しこの土地に親族ができれば、いちおう土地に根をおろしたことになる。単に「江戸から来て江戸へ帰る」人間ではなくなるから、しぜん周囲の見る眼も違ってくるだろう、――こう考えていた。