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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页

青空文庫

笈川玄一郎を送るために、親しい友達なかまで別宴を張って呉れたが、集まった七人のうち三人まで国詰になった経験があったから、話はしぜんその方面のことでもちきり、なかばからかいぎみの忠告や意見がしきりに出た。

「なにより困るのはすぐ刀を抜くことだ、議論に詰るとすぐ決闘だからな、絶えず決闘がある」

萩原準之助が云った。

「――尤もどっちか少し傷がつくと、勝負あったでひきわけになるんだが、議論のほうもそのままひきわけだからね、結果としてはなんにもしなかったと同じなんだ」

「あれが自慢のお国ぶりなんだ、もっとも武士らしいやりかただと思ってる」

「もうひとつふしぎなのは女たちの威勢の強いことだね、威勢というより権力にちかいものだ」井部又四郎がそう云った。

「――夫人や令嬢たちが幾つも会をもっていて、音曲や茶や詩歌の集まりをするのはまあいい、堂々と男を客に招いて酒宴を催すのにはびっくりしたよ」

「おまけにあの傲慢な男たちがみんな一目おいているからね、道で上役の夫人などに会うとこっちから挨拶をする」

「それを怠るとあとが恐ろしいんだ」

玄一郎は、苦笑しながら盃を取った。

「もうそのくらいで充分だ、あんまりおどかさないで呉れ」