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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页

青空文庫

こう云うと、玄一郎は袖へ手を入れて、上着の肌をぬぎ腰へしっかりと挾んだ。下は死に支度の白絹である。

「――相手は誰と誰だ」

白布を出して汗止めをし、袴の股立をとりながら、初めて彼はそこにいる青年たちを眺めまわした。

「――一人ずつか、それとも此処にいる者みんながいちどに来るか」

かれらが気をのまれたことは慥かである。決闘といっても、この土地では片方が傷を負えば、それで勝負がついたことになる。ところが玄一郎はどっちか死ぬまでだと云った。もちろん武士が果し合いをするとすればそれが当然であるし、彼のようすもそこまでやるつもりらしい。

上着の肌をぬぎ、汗止めをし、袴の股立をとる、おちつきはらった動作を見ていると、明らかに殺気が感じられた。

「勝負は一人と一人だ」益山が仲間のほうへ手をあげた、「――おれが相手になる、誰も手出しをするな」

益山は元気に叫び、袂から革紐を出して襷をかけた。これまで幾たびとなく決闘をし、たいてい勝ち取っている。みんなそれを知っているからなにも云わず、二人を中心に輪をひろげた。

益山は襷をしただけで草履をぬぎ、刀の柄へ手をかけて云った、「こっちはいいぞ」