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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页

青空文庫

「津田さまがおさかんなころ、或る家のお嬢さまと恋仲になり、あなたがお生れになった、あの方には奥さまも御長男もいらっしたので、庫田さまに頼んで、あなたを笈川家へお遣りになったそうですの、――そのときはなんとも思わず、すぐ忘れておしまいになった、そうして奥さまが亡くなり、御長男に先立たれてから、ようやく、……初めてあなたのことを思いだし、あなたを見たい、あなたを取戻したいと思うようになったそうですの」

もちろんそんなことができるわけはない。庄左衛門は自分の過失の重さを知った、血を分けたおのれの子を、物でも呉れるように他人へ遣った。

邪魔だったから、そうしなければ都合が悪かったから、親子の情などは感じもせず、些かのみれんもなく遣ってしまったのである。……それが人間を侮辱し、冒涜するものだということを年が経つにつれてわかってきた。

「あなたがこちらへいらして、御自分のお子だとわかってから、あの方は毎日毎日、むかしの罪ほろぼしをしたい、あなたのためになにかしてさしあげたい、そう考えていらしたそうですの、――そして幸か不幸か、そのときが来たのですわ、……あの方はよろこんで、本当によろこんで、自分の罪ほろぼしをなすったのですわ」