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いなか、の、じけん
いなか、の、じけん
夢野 久作
「探偵趣味」「猟奇」1927(昭和2)年7月~1930(昭和5)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,535 字 · 78 页
後家さんは、めんくらった。
「按摩さんが火事火事」
と大声をあげて村中を走りまわったので、忽ち人が寄って来て、大事に到らずに火を消し止めた。気絶した按摩は担ぎ出されて、水をぶっかけられるとすぐに蘇生したので、あとから駈けつけた駐在巡査に引渡された。
大勢に取り捲かれて、巡査の前の地べたに坐った按摩は、水洟をこすりこすりこう申し立てた。
「まったくの出来心で御座います。声をかけてみたところが留守だとわかりましたので……」
「それからどうしたか」
と巡査は鉛筆を嘗めながら尋ねた。皆はシンとなった。
「それで台所から忍び込みますと、ラムプを探り当てましたので、その石油を撒いて火をつけましたが、思いがけなく、うしろの方からも火が燃え出して熱くなりましたので、うろたえまして……雨戸は閉まっておりますし、出口の方角はわからず……」
きいていた連中がゲラゲラ笑い出したので、按摩は不平らしく白い眼を剥いて睨みまわした。巡査も吹き出しそうになりながら、ヤケに鉛筆を舐めまわした。
「よしよし。わかっとるわかっとる。ところで、どういうわけで火を放けたんか」
「ヘエ。それはあの後家めが」