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いなか、の、じけん
いなか、の、じけん
夢野 久作
「探偵趣味」「猟奇」1927(昭和2)年7月~1930(昭和5)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,535 字 · 78 页
蟻と蠅
「ウ――ム。しかしよく考えてみるとそれは理窟に合わんじゃないか。そんなにして二日も三日も店を閉めたら、つまるところ損が行きはせんかな」
「ヘエ。それがです旦那様。最前お話し申上げましたその娘夫婦も、それを恥かしがって東京へ逃げたのだそうでございますが、お安さん婆さんに云わせますと……『自分で作ったものは腹一パイ喰べられぬ』というのだそうで……ちょうどあの婆さんが死にました日が、ここいらのお祭りで御座いましたが、法印さんの処で振舞いがありましたので、あの婆さんが又『一服三杯』をやらかしました。それが夜中になって口から出そうになったので勿体なさに、紐でノド首を縛ったものに違いない。そうして息が詰まって狂い死にをしたのだろう……とみんな申しておりますが……」
「アハハハハハ。そんな馬鹿な……いくら吝ン坊でも……アッハッハッハッ……」
巡査は笑い笑い手帳と鉛筆を仕舞って帰った。
しかしお安さん婆さんの屍体解剖の結果はこの話とピッタリ一致したのであった。
蟻と蠅
山の麓に村一番の金持ちのお邸があって、そのまわりを十軒ばかりの小作人の家が取り巻いて一部落を作っていた。