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いなか、の、じけん

いなか、の、じけん

夢野 久作

「探偵趣味」「猟奇」1927(昭和2)年7月~1930(昭和5)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,535 字 · 78 页

青空文庫

「何ですって……妾が堕胎したかどうか巡査が調べに来ているんですって……ホホホホホ生意気な巡査だわネエ。アリバイも知らないで……」

玄関に近いので母親はハラハラした。眼顔で制しながら恐る恐る問うた。

「……ナ……何だえ。その蟻とか……蠅とかいうのは……アノ胎児の足にたかっていた虫のことかえ……」

「ホホホホホホそんなものじゃないわよ。何でもいいから巡査さんにそう云って頂戴……妾にはチャンとしたアリバイがありますから、心配しないでお帰んなさいッテ……」

母親はオロオロしながら玄関に引返した。

しかし巡査は娘の声をきいていたらしかった。少々興奮の体で仁王立ちになって、ポケットから手帳を出しかけていたが、母親の顔を見るとまだ何も云わぬ先にグッと睨みつけた。

「そのアリバイとは何ですか」

母親はふるえ上った。よろめきたおれむばかりに娘のところへ駈け込むと、雑誌の続きを読みかけていた娘は眉根を寄せてふり返った。

「ウルサイわねえ。ホントニ。そんなに妾が疑わしいのなら、妾の処女膜を調べて御覧なさいッて……ソウおっしゃい……失礼な……」

母親はヘタヘタと坐り込んだ。巡査も真赤になって自転車に飛び乗りながら、逃げるように立ち去った。