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おごそかなかわき

おごそかな渇き

山本 周五郎

「朝日新聞日曜版」 1967(昭和42)年1月8日~2月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,042 字 · 71 页

青空文庫

それなのに、おれをここまで背負って来て、少ない米の粥を作り、治るまで看病をしてくれた。なぜだろう、どうしてそんな気持が起こるのだろう、「どこへいったっておんなしこった」と油屋の親方は云っていた、「この山でおめえはむずかしい炭を焼いている。ブラジルへゆこうがアフリカへゆこうが、生活はみんな楽じゃあねえし、危険だって避けようがねえ、どこへいったっておんなしこったよ」

「それじゃあきみは、ここにおちつけって云うのかね」

油屋は大きく頭を振り、「そんなこたあ云わねえさ」手酌で酒を啜った、「人間のくらしってものは、北海道だって九州だって、世界じゅうのどこだって同じようなもんだ、――島田村長の口まねをすれば、この世の中のあらゆるものごとや出来事はみな、神の意志によるものであり、ついには神の意志によって亡ぼされるもんだという、むろん、おらあ信じちゃあいねえがね」

「きみが信じようと信じまいと、それは神とは少しも関係のないことだ、それから、人間のくらしや苦楽は、世界じゅうどこでだって同じだというのもね」竹中は云い返した、「――きみはイギリスもフランスも、ドイツも知らない、もちろんブラジルのことも知ってはいない、どこにどういう生活があるかも知らないのに、みんな同じことだと平気で云うことができる、きみだけじゃあない、世界じゅう