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おごそかなかわき
おごそかな渇き
山本 周五郎
「朝日新聞日曜版」 1967(昭和42)年1月8日~2月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,042 字 · 71 页
「それは悪いよ」と彼は眉をしかめた、「お米はそうたくさんあるわけじゃないだろうし、あとでお父さんが困るじゃないか」
「もうすぐ女の人がうちへ来るの、あたし大事なお米を、そんな人に喰べさせたくなかったのよ」
隆二はどきっとした。少女の言葉よりも、そう云ったときの口ぶりに、とうてい十四歳という年齢とは思えない憎しみと、するどい嫉妬が感じられたからである。竹中啓吉の再婚する相手がどんな女性か、としが幾つかは知らない。けれども、たとえその女性が三十歳を越し、多くの経験を身につけていたとしても、いまのりつ子のいだいている憎しみと、嫉妬にうちかつことはできないだろう、と彼は思った。――しかしこのままではいけない、ここでなにか助言をしなければならない、と彼は気持をたて直したが、そのとき二人のうしろで、突然どなりだした者があった。
「おめえら、そこでなにをしてるだ」
訛りが違うので、すぐにはわからなかったが、振り返ってみて、そこに杖を突いて立っている老人をみつけるまでに、およその意味は察しがついた。
「弁当を喰べるところです」
「たったいま出ていけ」老人は隆二にみなまで云わせずに喚いた、「ここはおらの地所だ、よそ者のへえるところじゃあねえ、その水も堰へ戻すだ、ひとしずくだって飲むじゃあねえぞ」