轻松读懂日语经典作品
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おばなさわ
おばな沢
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,479 字 · 45 页
「いやそれはあなたの聞き違いですよ、私はそんなに気にやむ必要はないと云ったので、決して不養生をしていいとは云やあしません、お願いしますよ、どうか気をつけて下さい、さもないと山にいられなくなりますから」
彼は熱のあるような眼でこちらをみつめ、すり寄って来て手を出した。節子は微笑しながらその手を握った。
「――節子さん」
低く押えつけたように囁いたと思うと、彼の眼がふいにきらきらと光り、握っている手の指が痙攣した。一種の本能的な直感で、節子はあっと叫びそうになった。しかしそのまえに英之助が上からかぶさり、片方の肩をつよく抱かれた。
「――堪忍して下さい」
彼はすぐに離れ、坐りなおして頭を垂れた。眼の中で火花が飛んだような気持だった。節子は掛け夜具を額までひきあげ、そっと自分の唇を拭いた。
「――堪忍して下さい、前後を忘れたのです、日も夜も、眠っていても、いつもあなたのことを思っていました。あなたの御病気が重くなるような気がしてならない、万一のことがありはしないかと、そう思うといても立ってもいられなくなる、毎日そんなふうなんです」
彼は低い声で、胸苦しそうに囁やいた。