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おるすばん
おるすばん
壺井 栄
「少女の友」実業之日本社、1943(昭和18)年6月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,306 字 · 13 页
それはもも子といふお母さんの名からきた思いつきでしたが、まだ実現しないでいたのです。おじいさんがミカン畑を作って、あっといわせるなら、和子もモモを植えて、お父さんをあっといわせたいと考えました。
「おじいさん、ミカン畑賛成じゃ、そのかはりモモの木も植えてよ。」
「ほほう、桃の木か、そりゃ面白かろうな。」
おじいさんが一度に賛成してくれたので、和子は涙がでるほど嬉しくなりました。モモの花とミカンの青い葉の色が、くっきりとした配色で丸尾の畑をつつんでいるさまが和子の眼の前に現れました。モモの花はお母さんのやさしさであり、ミカンの青さはお父さんの強さのような気がするのでした。すると船の甲板から、望遠鏡をのぞいているお父さんの姿がありありとそうぞうされました。その望遠鏡は、丸尾の畑に向って、向けられているのでした。