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おるすばん
おるすばん
壺井 栄
「少女の友」実業之日本社、1943(昭和18)年6月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,306 字 · 13 页
一
一
生まれた時から和子はおじいさん子でした。そんな小さい時のことなど、知ろうはずはないのですが、おじいさんの話を聞いていると、まるでおじいさんに育てられたような気がするほど、おじいさんは、和子の小さい時のことを知っていました。和子のことをカ子と呼び、
「カ子が小さい時にのう。」
と語りだすと、きょうだいのない和子は、ひとりっ子のさびしさを忘れて、おじいさんの語るカ子という子供が和子自身ではなく、どこか遠い国のお話の中の子供のようにめずらしかったり、また妹のようになつかしかったりするのでした。和子はさびしい時など、よくおじいさんにおねだりをしました。
「おじいさん、カ子の話、聞かしてよ。」
するとおじいさんは、かならず二つ返事で語りだします。
「おじいさんがカ子をおんぶしてのう、お母さんのところへ乳をのませにゆきよった。権兵衛のわきを通って伝右衛門の前の橋までゆくと、カ子はちゃんと泣きやむのじゃ。学校が見えるからのう。橋を渡って学校の方へ行くとカ子はおとなしくしとるが、はんたいに、川下の方へ歩くとカ子はじゃんじゃん泣きよった。急いで学校の方へ向き直ると、ちゃんと泣きやむ。