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おるすばん
おるすばん
壺井 栄
「少女の友」実業之日本社、1943(昭和18)年6月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,306 字 · 13 页
四
今にお父さんも帰ってくるからね。船をやめてだよ。」
「…………」和子はだまってうなずきましたが、それと同時に、涙があふれでてきました。
「学校など、一度位落第してもよいから、お母さんを大事に看病してあげてくれな。」
お父さんはかさねていって、お母さんの部屋へゆきました。お父さんはその夜の便船で帰ってゆきました。お母さんの病気以来、ずっと炊事を引受けている和子は、いっそう気をつけて料理などの上手につくれる人のところへ聞きに行ったりしました。
「お母さんが病気したらばこそ、カ子ちゃんずい分うまくなったわ。このおかゆなど、お母さんより上手よ。ふんわりしてねばり気があって。だけど、ホウレンソウは少しうですぎね。」
和子はお母さんのひひょうを聞きながら、心の中で、無理やりに若松へ行くことを主張したあの時を思い出し、
「お母さんごめんなさい。今度こそいい子になりますから早くよくなってください。私のお料理などへたになる方がよいのです。」と祈っていました。
四
お父さんがいよいよ船をおりて、家へ帰られてから間もなく、和子のお母さんは、この世の命を終りました。泣いて泣いて、病気になるほどなげく和子を、おじいさんとお父さんは、少しづつ立ち直らせて、もとの和子に戻らせようとしました。