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おるすばん
おるすばん
壺井 栄
「少女の友」実業之日本社、1943(昭和18)年6月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,306 字 · 13 页
二
「なにせ、カ子は元気山で、泣声じゃとて村中ひびくほど大きかったからのう、そこへもってきて、腹をへらす子で、何でも時間より三十分も一時間も前から泣きよった。そして、泣き出すと、もう学校の方へ向いて行かんとやまなんだ、そんなふうじゃから、学校が遠足の時にはおじいさんはカ子をおんぶして弁当持ってついて行きよった。そんな日に限って、カ子はおぢいさんの背中でぐうぐう眠って、乳のむのも忘れとった。お母さんのお乳がはって、着物の上からしずくがたれだすので、お母さんはお前をゆすぶり起してのましよった。」
和子はおじいさんの話の中から遠い日のお母さんの姿をまざまざと心にえがきました。
二
おじいさんのお話は、何度聞いてもあきませんでした。そのように、何度もおなじ話をくりかえしたり、又時にはびっくりする程新しい話だったりしました。何度も聞いた話でも、おじいさんが語ると、それは新しい話のように和子の心にしみこみますし、初めて聞く話はまたそれで、どこかで聞いたことのあるような、なつかしさをおぼえました。それは、和子自身の幼い記憶と、多かれ少かれつながるものであるからでしょう。