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おれのにょうぼう

おれの女房

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,296 字 · 46 页

青空文庫

――なんだろう、なに事があったのだろう。

すぐにははいりかねる気持だった。しかしなかば不安にかられて格子をあけ、声をかけると、けたたましく女たちが笑い、そらお石さん可愛い御亭主のお帰りだよ、御亭主なんてとんでもない、天下に名高い大先生じゃないか、はいお帰りあそばしませ、ずっとどうぞ。そんなことを云いながら、中から女の誰かが障子をあけた。

行燈のほかに蝋燭が三つ、眩しいほど明るくして、近所の女房たちらしいのが六七人、膳を並べて、仕出し屋からでも取ったとみえる、食いあらした皿小鉢や椀などを前に酒を飲み、いいきげんに酔って騒いでいるところだった。

「そんな妙な顔をしないでこっちいおいでなさいね、のうこちのひと、ここへおじゃや」

お石がそう云って畳を叩いた。

それでまた女房たちはきゃあと声をあげ、みだりがましく隣りにいる者へ抱きついたり、押し合ったりして、口ぐちに囃したてた。

又五郎はあっけにとられ、とまどいをし、途方にくれてなにか云いわけのようなことを云いながら、こっちから障子を閉めて外へとびだした。路地へはいるとき、長屋の差配をしている五兵衛の家が起きているのを見た。