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おれのにょうぼう
おれの女房
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,296 字 · 46 页
「冗談じゃない、それは私が買ったもんですぜ、買って金を渡した以上私の物だ」加平は色をなして云った。「――おまえさんがどんな偉い絵師かは知らないが、いったんひとの持物になった絵を、ただ気にいらないからで破くという法がありますか、乱暴じゃあないか」
「まことに申しわけありません、無法も乱暴もわかっています、しかしこの絵は破かずにはおけないのです、――今こんなことを云うのは御笑止かもしれませんが、その代りに必ずいいものを描いて、きっとこのお詫びを致しますから」
両手をついて、頭を垂れて、謝罪を乞う者のように又五郎は云った。加平の怒りは嘘ではなかった。けれども又五郎のそのようすを見ると、自分にも悪いところがあったと気づき、こんどは穏やかに頷いた。
「それはまあ、あたしも留守へいって、平野さんの承諾なしに貰って来たのは悪かった。待ちに待って、しびれをきらしていたところだもんだから、――まあついなにしてしまったんだが、どうだろう平野さん、この図柄をもっと大きなものに描く気はありませんか」
「もっと大きくといいますと」
「六曲はどうです、なるべくなら一双がいいが、半双でも描いてみる気はありませんか」