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おれのにょうぼう
おれの女房
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,296 字 · 46 页
帰れと云ってもきかず、まもなくまた狩野家へ女中にはいった。縁談も二つ三つあったけれど、そんな話には耳もかさずに、ずっと狩野家で勤めていた。
勝手にとびだしたものの、やっぱりみれんはあったのだろう、又五郎の消息には絶えず注意をしていた、そうしてこんど彼が松平阿波守にみいだされたこと、彼の描いた屏風が、狩野派の絵師たちにまで、名作と評判されていること、これらを聞いて矢も楯も堪らず、親元へとんで来て、どうか復縁させて貰いたい、自分の悪かったことはどんなにでもして詫びをする、これから心をいれかえて良い妻になる、どんな辛抱でもするからと、泣いて親たちをくどいたということであった。
「この年をして、こんなことをお願い申すのは、まことに面目がございません、実のところお願いなどできるわけのものではないのでございますが、私にしましてもこれは血をわけた姪ではあり――」
「いやわかりました、お話はよくわかりました、そのお返辞はね、さしでがましいが私からお石さんに云わせて貰います」五兵衛はこう云って、お石のほうへ向きなおった。
「お石さん、叔父さんの仰しゃることは聞いたよ、おまえさん先生のところへ戻りたいんだって、――へえ、あの貧乏のさなかには後足で砂をかけるように出ていったおまえさんが、こんどは先生が出世をなすった。