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おれのにょうぼう
おれの女房
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,296 字 · 46 页
天下の絵師といわれるようになんなすったから、元へ戻りたい、……へえ、いい都合だねえ、あっぱれみあげたもんだ、けれどもね、おまえさんにはいい都合かもしれねえが、また先生がなんと仰しゃるかあ知らねえが、こいつは私がお断わりするよ、さしでがましいが私がきっぱりお断わり申すよ」
「五兵衛さん待って呉れ」又五郎がとつぜんそう云った、「その気持はよくわかるが、ちょっとそいつは待って呉れ」
「いや平野は口をだすことはない」
島田敬之助が叫ぶように遮った。井上孝兵衛も、貞造もそれに続いて叫んだ。
「そうだ平野は黙っているがいい。これは五兵衛さんとおれたちで切をつける、いいからそこで黙って見ていて呉れ」
「いやそうではない」又五郎はなお首を振って云った、「――みんなの気持はわかっているが、これはおれとお石の問題だ」
「まあいい、話ははっきりしているんで、なにも問題なんかありやしない、きっぱりけじめをつけさえすればいいんだ」
「なにを云うんだ、なにがけじめだ」
又五郎はいきなり島田の衿を掴み、今にも撲りかねない姿勢で、声いっぱいに叫んだ。
「お石はおれの女房だ、みんなにどれほどの文句があるか知らないが、亭主のおれをさしおいてあんまり勝手なことを云うな」