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おならさま
お奈良さま
「別冊小説新潮 第八巻第一〇号」1954(昭和29)年7月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,159 字 · 20 页
そのとき「あの雄弁家のクラスは」と云って彼女が五年六年のころには各先生がその受持になることを避けたがる傾向があったほどである。母のソメ子にまさるウルサ型として怖れられていた。
中学校二年の糸子は押しも押されもしない言論界の猛者であった。学内の言論を牛耳るばかりでなく、町内婦人会や街頭に於ても発言することを好み、彼女の向うところ常に敵方に難色が見られた。
この糸子がソメ子にまさるお奈良さまギライであった。葬儀の直後、葬場から一室へ駈けこんで無念の涙にむせんだほどで、野人のかかる悪風は世を毒するものというような怒りにもえた。ソメ子の怒りも実は糸子にシゲキされた傾きがあったのである。
そもそも彼女には禁酒論や廃妾論などゝ並んで売僧亡国論とか宗教改革論などというものがすでにあったのだから、祖母の葬儀を汚したオナラへの怒りは大きかった。その時までは糸子と花子は親友というほどではないが仲のよい友達であった。葬儀の翌日登校した糸子は同級生の面前で花子へ絶交を云い渡したうえ、
「その父の罪によって子たるあなたへ絶交するのは理に合しないかも知れませんが、この場合、理ではなく、すすんで情をとることにしたのです。