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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
兄さん丈けに、
「常々仙吉がお世話になりまして……仙吉、お寛ぎなさるようにお前からも申上げてな……」
という風で全く呼び捨てだ。
「兄さん、案内は私がしますから、何うか御心配なしに願いますよ」
と団さんも分際を守って、弟の礼を執る。兄さんと弟だからこれは何の不思議もない話だけれど、双方とも額の少々禿上る年配なので、一寸異様の感がする。田鶴子さんもお母さんの名前の呼び捨ては毎日聞いているが、お父さんのは初めてと見えて、
「痛快ね。家で威張っているお父さんも此処へ来ると唯の仙吉なんですもの。何だかお父さんの名前を初めて聞いたような気がしますわ」
と僕に言った。
さて「名古屋へいりゃあたら寄て頂戴も」という註文は果したが、団さんの発祥地は、「笹島駅から三丁目、一軒置いて二軒置いて三軒目」よりはもっと遠く、碁盤割の本町通り、木綿問屋が軒を並べているところだった。店には小僧がウヨ/\している。子供も男女取り交ぜて十人という大家内、僕と同年の息子さんや田鶴子さんの従姉が相手をしてくれるので一向退屈を感じない。
「あんた、大須の観音さんは賑かでなも。東京なら浅草のようだも。