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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
「お嬢さん、栄螺の壺焼をお喰りなしていらっしゃい。名物でございます」
「坊ちゃん、栄螺の壺焼をお喰りなしていらっしゃい。理科の参考にもなります」
と一々名を指して呼びかける。
「田鶴子も謙さんも余程喰べたそうな顔をしていると見えるよ。一つ喰べて行こうか?」
と団さんは僕達に託けて、割合に綺麗な店へ差しかゝった時腰を下した。
「不消化物らしいね」
と躊躇した三輪さんも一人前平げて、
「この尻尾のような青いところも喰べられるのかい?」
と念を押し、
「尻は胃病の薬ですよ」
と女中に教えられて殻丈けは残した。
夫婦岩は甚だ評判が悪かった。
「これは一寸詐欺にかゝったような気持がするね。これぐらいの岩なら大抵の海岸にある」
とお父さんが言うと、団さんも、
「写真では彼の玩具の鳥居が真物に見えるから余程巨大な岩だと思い込む。比例尺を普通の鳥居の現寸大と考えさせるところが手だ」
「この石垣が又俗悪だね。宛然江の島で売っている介細工の筆立見たいだ」
と三輪さんに至っては側の石垣まで貶した。
第八回
予定の時刻に伊賀の上野に着いたが、迎えに出てくれる筈だった三輪さんのお弟子の姿が見えない。