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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

実務家は兎に角、思想の世界に住むものは或程度まで片輪にならなくちゃ駄目だよ」

と星野さんは団さんの為めに弁じた。

「僕も大いに同感だ。十日も旅行をして何一つ持物をなくなさないようじゃ余り実務的で人間としての余韻がない」

と三輪さんが未だ蝙蝠傘を惜しがっていた。

「今日は方々から名論卓説が出るね。しかし好い気なもんさ。君は先刻から団君の煙草を喫っているぜ」

とお父さんが注意した。

「敷島なら誰のだって同じことさ。僕は余り自他の差別を設けない」

と三輪さんは平気で言った。

「流石に余韻がある」

と団さんが笑った。

こんな太平楽を並べている中に、

「坊ちゃん、あれが京都のドンですよ」

と星野さんが教えて呉れた。成程ピューウというような汽笛が尻上りに喧しく鳴り渡っている。

「あれがかい? ドンまで間が伸びているね」

と団さんが貶した。

「うむ。未だ鳴っている。あゝ長くちゃ聞いても痛切に腹が空らないね」

とお父さんも言った。

「ドンといえば大砲に限ると思っているところが浅ましい。君達は考えないから困るよ。口では軍国主義を否定しても、国民挙げて時計の針を陸軍の大砲の音に合せているんじゃ、外国人が本気にしない。