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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

と星野さんは自動車に乗り込んでからクス/\笑い出した。そうして、

「それも黙っていれば宜いのに、お礼の序に、『しかしあれは案外鹹いものだね』と正直なところを言ったので、今に逸話が残っている」

「宜いさ。それぐらい度胸が据っていないと両本願寺の膝元で基督教の伝道は出来なかろうからね」

とお父さんが言った。

昨日は雨で見す/\半日潰れたからその分の取り返しをする為め今日はナカ/\忙しかった。朝早く宿屋を引き払い午後大阪へ立つまでの時間を最も有効に利用しようとあって、案内役も星野さんと柴さんの二人がかりだった。まず手近から片付けることゝ御所を堺町御門から何とか御門へ通り抜けた。停留場で電車を待っている間に、

「学校騒動と財政困難で有名な同志社は直ぐこの向うで相国寺の隣りです」

と柴教授が特に僕に教えて呉れた。

「この案内人は碌なことは言わない」

と星野牧師が笑った時、若い夫婦が歩み寄って丁寧にお辞儀をして行った。星野さんがその後姿を見送りながら頻りに小首を傾げていると、

「何うしたい?」

とお父さんが訊いた。

「驚いたよ。彼奴等は二三日前に喧嘩をして別れるの何のと騒いでいたんだが、最早仲が直って二人で花見にでも出掛けるところらしい」