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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

と車掌は第三者は相手にせず、

「あんた、渡したいう証拠がありまっか?」

と何処までも当事者を追求して腕のところへ手を掛けた。これが東京なら本人は素より傍の者が黙っていない。然るに大学生は険悪な色を示しながらも切符の二重払いをして穏便に問題を解決してしまった。流石に京都は悠長だと思った刹那、車掌がその場へ地響きのするほど叩き倒されたのには僕も吃驚した。

「何で人を叩く?」

と車掌はヨロ/\しながら敦圉いたが、大学生は、

「叩いたいう証拠がありまっか?」

と反問して悠々と歩み去った。

「痛快だったね」

と団さんが溜息を吐いた。

「京都の学生はナカ/\荒っぽいね」

と三輪さんは喜ばなかった。

「荒っぽいよ。学生に限らず車掌でもあの通りだ。演説会なんかでも京都ぐらい弥次の多いところはない」

と星野さんが言った。

「兎に角今のは車掌が少し附け上っていたね」

とこれはお父さんで、

「車掌ぐらい不都合なものはないよ」

と未だ憤慨していたのは団さんだった。

新京極で電車を下りて牛肉屋へ上り込んだ。此処でお昼を食べるのが昨日から予定になっていたところを見ると、「すき焼」は京都の名物らしい。